井桁裕子 略歴
1967年、東京に生まれる。
1986年、大学在学中に日本創作人形学院にて本城弘太郎氏に球体関節人形を学ぶ。
1990年、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。その後はデザイン会社に勤務するかたわら球体関節人形を制作、グループ展などで発表する。写真、陶芸など他分野の若い表現者との交流が盛んになり、その後一時、写真表現に取り組む。
1996年、自分の身体を正しく把握できないことへの危機感から「セルフポートレートドール」として自分をモデルにした球体関節人形を制作。女性の身体の「見る・見られる」主体と客体の問題に注目する。引き続き、友人のポートレートを撮影しそれをもとに肖像の人形を制作し始める。以来、現実に出会った人物をモデルにして制作する事がライフワークとなる。
2003年の個展に続き、2004年に東京都現代美術館での「Dolls of INNOCENCE 球体関節人形展」に参加。そこで「闘病日誌ー音楽家・金田真一氏の肖像人形」などを展示。
その後デザイン会社を退職、イラストレーターとして独立する一方で、作家活動を本格的に開始する。
陶芸など、人形の表現と技法を模索し始める。
2005年、和紙による張り子や桐塑などの、丈夫で環境負荷の少ない素材での制作を学ぶため「四谷シモン人形学校(エコール・ド・シモン)」に入学。映画監督・坪川拓史氏の劇場用長編映画「アリア」(2006)に四谷シモン氏が出演、それに共演する人形の制作を手がける。同監督の次の長編映画「ハーメルン」(2013)にも人形制作で参加。
また2004年以降「舞踏」と出会い、身体表現・パフォーマンスに関心を深める。2007年に舞踏家・吉本大輔氏の肖像作品を制作して以降、球体関節人形のスタイルを越えた造形を求め始める。
2012年に重度障害者でありながら女優・コンテンポラリーダンサーとして活躍する森田かずよ氏と出会い、2年半をかけてその身体を忠実に造形した「片脚で立つ森田かずよの肖像」を制作。「造形表現としての人形」というあり方の可能性を具体的に広げる作品となった。