井桁 裕子HIROKO IGETA

INVITATION 井桁裕子個展「2004-2019」

2019年9月17日(火)~9月30日(木)まで、ストライプハウスギャラリーにて井桁裕子個展「2004-2019」を開催いたします。
井桁裕子は、実在する人物を桐塑で再現した肖像人形や幻視を可視化した陶人形など、実存的かつ超現実的な造形で私たちの潜在意識を強くゆさぶってきました。
舞踏家、吉本大輔の肖像《枡形山の鬼》(2007年)、高橋理通子の肖像《加速する私たち》(2012年)、義足のダンサー、森田かずよがモデルとなった《片脚で立つ森田かずよの肖像》(2015年)など近年の代表作のほか、陶による小品約50点を一堂に会します。
そして現在とり組んでいる”ゲージツ家 KUMA”こと篠原勝之をモデルにした《ウラノス・ロータス・ウラニウム》をWork-in-progressとして展示します。
ウラノスOuranosとはギリシャ神話に登場する天空神であり、太陽系の外惑星、天王星の名称に当てられています。84年で太陽の回りを一周する天王星は7年ごとに星座のサインを移動し、そのたびごとに世の中の様相が変わる”革命の星”といわれています。発見されたのはフランス革命へと突き進む大きな変革の時代でした。
また核燃料となる天然の放射性物質であるウラニウムuraniumは、ウラノスOuranosのラテン語形であるUranusを語源としています。
われわれ人間は宇宙の一部であり天体のリズムを内包した存在であること、生命活動を支える内蔵器官が植物的であることなどが、古今東西、多義的な意味合いをシンボリックに投影されてきたロータスlotus(蓮)との類比によって示唆されます。
本展タイトルにまつわる2004年は天王星が魚座に移動した年であると同時に、作家にとって制作上の大きな節目でもありました。そして魚座最後の日に東日本大震災が発生し、牡羊座最初の日に福島第一原発1号機が爆発したという事実との符合に、作家は驚愕したといいます。2019年3月から天王星は牡牛座にあります。
これまでの井桁裕子の仕事の道程を辿り、これからを展望するこの機会にぜひ足をお運びください。

京谷裕彰(詩人・批評家)